風美しいこの丘を

私は父の転勤などで、公立の小学校を三校経験しました。どの学校ももちろん校歌がありましたが、覚えているのは、1つだけなんです。なぜ覚えているかというと、初めて聞いたときに「美しい」と思ったからです。

「学校はどこと聞く人に 見せましょう 風美しいこの丘を 秩父の山の紫を」

わたしが覚えている小学校の校歌は、こんな風に始まります。豪華なことに、作詞は「ぞうさん」などでおなじみのまどみちおさんでした。

この小学校のあった場所は、ランドマーク的なものがあるわけではなく、そういう意味で自慢できるものはない場所なのです。いわゆる「何もない」で片付けられると言う印象をみんなが持ちそうな場所で、僅かに見える、言われたら紫にもみえる秩父の山々をたたえ、風という目に見えないものの美しさをたたえ「そんな素晴らしさが隠れていることにちゃんと気づけた?」と、まどさんがウィンクしてくれる感じがするんです。

そして、そんな隠れた素晴らしさに気づけたんだから「学校はどこと聞く人に、その目に見えないものを見せてあげて」と、誇りの本質を教えてくれています。

「(お金や能力や機会)がない」からと、買い物にがめつくなったり、パートナーに嫉妬したりして、苦しみを深めてギリシャ彫刻みたいにしている人をみると、わたしはいつも、この私が数年通った小学校の校歌を思い出すんです。

そして「この人の中の隠れて見えない素晴らしさはどこかな?」と、楽しくなります。