ないのに輝く。

雨続きですね。時々どこかで地震が起きますね。新型コロナ感染者数も減っては来ませんね。そんな中「あぁ、お金がないなぁ」って、泣きたくなったんです。通帳の数字も、もうまともに見られないんです。

一生懸命やってきたつもりなのに、そしてきっとそう見られているのに、惨めで。でも、外では胸を張っていい運を呼び込もうとするから、誰も私の胸のずきっとする痛みや顔を伏せようとするわずかな筋肉の動きに、気づいてくれたりもしません。気づいて、それこそポンとお金をくれたら嬉しい位だけれど、もし真っ向から「お金ないの?」などと言われたら、いたたまれなくなって、さらに嘘をつく苦しみが生まれる。気づいてもらえなくて、ほっとする気持ちも潜んでいるんです。

なんでこんなに働いているのに、必要なものしか買っていないのに、こんなにお金がずっといつもないのか、わたしが聞きたい位です。今日もお財布の中を開けた時に「なんで?」と叫びたい位でした。みんな大変なことはもう本当に嫌なのに!

小さな頃にお小遣い帳をうまくつけられなくて、そのまま大人になった気がします。国家資格をとって、博士号だってとったのに、一番変えたいところだけそのままなんて、なんて皮肉なんでしょうか?いつも胸の中にある惨めさを、返品したい位だと、あなたは思っているんです。でもその宛先がわからない。口の中に苦味を感じたり足に痺れを感じたりしながら「もう私の中には何もない」って、何度思ったでしょうか?

そして、その何もない中を惨めなまま見つめていた瞬間に、何かが砂金のようにキラキラと輝いた気がするんです。空っぽの段ボールみたいな底を見ているだけなのに、最近は、見る度に何かがあなたの中でもキラッとするようになりました。

要らないものを思いっきり吐き出したいくらいの安っぽい底が、なぜだかキラッとするようになってから、段ボールでできてたようなそれが、リンゴの木箱みたいながっしり感になってきました。ある時はパンケーキみたいに膨らんで、いい匂いがしそうな感じもします。あなたはだんだん底を見るのが嫌じゃなくなってきたかもしれません。

いつの間にか、私の底は猫の足裏みたいなふかふかした感じが当たり前になって、キラキラも回数が増えてきたんです。相変わらず何もないんだけれど、少し楽しみになってきたかもしれません。底を見ることが。低反発クッションみたいにふかふかで気持ちがいいなと、あなたはちょっぴり思い始めたかもしれません。

今日は歩いていたら、虹を3回みました。きれいだなぁと見惚れましたが、でも、わたしの底の方がきれいだなぁと、ふと思ってしまったんです。相変わらず何もないまま、なんだかどんどん悪くない感じが増してゆく、あなたの底。その奥行きが、キラキラを反射させて、虹にも生み出せないような、代えがたい輝きを確かに放っているんです。そう、虹と違っていつもそこにある。

外にある何物にも代えることのできない輝きが、惨めだった私の底にいつの間にか溢れます。いつしかその美しさに目が開いていく時、あなたはそれがあなただったことに気づいてしまうんです。

吸う息と吐く息が織り成す心地よさに包まれて、私はいつの間にか、ある感覚の中にいることが当たり前になっていたと気づきます。まとわりつく湿気が私を揺らし、あなたはゆっくりとまどろみから覚めていきます。世の中の不穏が溶け出し、カルピスのようになって、確かに前に進む勇気をくれるのです。爽やかな空気のもと、どんよりした天気の中、今日も闊歩しましょう。